この世で最も忌むべきものは(10/26)

私は台ふきんが好きである。
台ふきんというか、要するに「湿らせた状態で使うために待機しているふきん」が。
台ふきんは万能だ。食器洗いの後なぜか水が飛び散って汚れているシンク周りを拭く。食卓やキッチンで何かこぼしてしまった場合もそれで拭ける。調理中に手がちょこっとべたついた時にも、洗うまでもない程度ならばふきんで拭く。もちろん都度都度、水洗いしながら。
そうして1日の終わりにはコンロ周りを拭う。油ハネなどもその日のうちであれば洗剤だのアルコールスプレーだの持ち出す必要はない。繊維がしっかりしたふきんなら、水拭きだけできれいになる。
台ふきんこそ台所の友、そして主婦の友である。

去年のブログより。羽海野チカ展に行ったついでに池袋西武で白雪ふきんを調達。ハチクロにちなみクローバー柄。白雪ふきんの柄かわいいよね……。

しかし夫は言う。
「僕は台ふきんが嫌いなんだよね」
夫曰く、台ふきんには雑菌が繁殖している。1日の終わりに洗濯機に入れようが何しようが、濡れた瞬間に雑菌の繁殖が始まる。そんなしめっとしたものを食品を扱う場所に置いておくなど言語道断である。
夫の指導により、今や台ふきんの待機場所は流しと壁の間の「かどっこ」となった。「かどっこ」以外の場所で我が家の(というか私の)台ふきんは待機できない。しかし私はそれに対して文句を言うわけにもいかない。何故なら、我が家においてキッチンは私だけの領域ではないから。夫も仕事から帰るなり台所に立ってくれ、同じキッチンで一緒に調理をしてくれるのだから。

この度、1日の終わりに行っている台所の簡単な掃除を、夫が担当してくれることになった。
「台ふきんでコンロを拭く」という習慣は当然廃止となる。
「台ふきんはきたない。台ふきんはくさい。僕にとって、台ふきんはこの世で最も――」
適切な言葉を探すように言いよどんだ夫に、「『忌むべきもの』?」と尋ねると、夫は力強くうなずいた。
「そう! 最も忌むべきものだ」

忌むべきもの、とまで言われたら、私は台ふきんでの掃除を強要するわけにもいかない。というか、やってもらうのだから当然、夫の好きな方法でやるべきだ。
夫はキッチンペーパーにセスキスプレー(自分で調べて作っていた。油汚れを落とすらしい)を吹き付けてコンロを拭いた。

私は自分の「この世で最も忌むべきもの」が何か考えた。数日考えたが出てこないので、別にないんじゃないかと思った。
しかし新しい家の給湯器で「お風呂の予約」ができることを発見し、試しに予約時間をいじろうとした時に気が付いた。
私は「12時間表示なのに12時台が存在する時計」が大嫌いだ。
給湯器の時計はそれだった。24時間表示の時計でいうところの「0:10」を示すのに「am12:10」という昼だか夜だかわからない表示をするやろうだ。腕時計や壁時計、スマホについている時計なんかでそんな表示をするものはまずないが、ストーブや給湯器といった「オプションで予約ができる家電」の時計は、こういう仕様になっているものがまれにある。
まさに「忌むべきもの」だ。

私はその話を夫にした。
夫は「そんな時計ある? 見たことないよ」とにこにこ笑う。
忌むべきものとは、そういうものだ。

実は本文と全然関係なかった去年の絵日記。時にこんなことにも使われてしまう台ふきんであった。