さいきん触れた文化(4/27)

ここ2か月くらいで読んだ本などを、覚え書き的に残しておきたい。紹介というほどちゃんとした文章にはなりませんが、なんとなく充実してた気がするので……。

『スピン』ティリー・ウォルデン

リアル書店に棚差しで置いてあったのをふと気になって手に取ってみた本。フィギュアスケートを習っている少女が主人公の、翻訳ものグラフィック・ノベル(と紹介されていたんですが、テキスト多めのまんがのことをアメリカではこう呼ぶんですかね?)。著者の実体験に即した、だいぶ淡々としたコミックエッセイです。
帯には岸本佐知子さんが『かっこよくない、きらきらしてない、出口も見えない十代を/抱えたまま生きていてもいいんだと、この本は教えてくれる。』というコメントを寄せているのですが……
しんどい!!! しんどい本だったぁ……(泣) なんか泣いたけど。感動とかじゃなくてしんどさで泣いた。
スケートの本か? と言われればスケートの本だ、と著者で主人公のティリーはあとがきに書いていたと思うけれど、そうなんだよな。。。スケートの本か? と問われるとだいぶ……5秒くらい考えて……「……イェ~ス……」みたいな返事になるよ。スケート以外のこともいっぱい描いてあんだけど。そしてスケートもスケートじゃないこともぜんぶしんどいんだけど!
ティリーはメガネキャラで学校ではいじめられ通し。レズビアンでまだ年若いから心を許して悩みを打ち明けられる相手もいない。そして母親が(ちょっとしか出てこないけど)クソ。言葉が悪いけどあれはクソとしか言えねぇ……。虐待してないし稼いではいるようだし外に出れば多分一般的な社会人として機能してるんだろうけれど娘への態度はクソ。
そんな中でフィギュアスケートがどういう役割を果たしているかというと、そこだけには仲間がいるとか、そこでだけは努力が報われるとかそういうこともなくって、ただの「しんどみをプラスする日課」なんですよ。どんなに死にそうでも寝れなくても朝4時に起きて自分の身体を引っ張り出す必要がある冷たいリンク!
私正直、この本読んで最初に思ったことは、「私の地獄の高校時代に義務的な日課がなくてよかった……!」ってことです。そんな細かい個人的な感想で悪いんだけど。岸本さんの言葉を借りれば「出口も見えない十代」をね、せめて自分の時間は好きなことをして過ごすのと、体力も時間もさらに捧げなければいけない日課があるのとで、地獄の中にさえ天地の差があると思った。
これはネタバレじゃないと思うから言うけど、ティリーは最後、スケートを辞めるんですよ。その時の気持ちは私が職業作家を辞めた時の気持ちに近くて、ありえないけど高校時代に小説を書くという日課があったらティリーの状態に近いかな……といっしゅん思ったけど、でもやっぱ小説はもうちょっと面白かった。書いてる時純粋に楽しかった。ティリーにとってのフィギュアスケートはそんなもんじゃないのだった。

『ブラスト公論 増補文庫版 : 誰もが豪邸に住みたがってるわけじゃない 』(徳間文庫)ライムスター宇多丸 前原猛 高橋芳朗 古川耕 郷原紀幸

ライムスターの宇多丸さんを中心に、男子5人(固定)が雑多な話題についてしゃべりまくるという……なんだ。おしゃべり本。
「ブラスト」というヒップホップ専門誌に連載していたものをまとめて本にして……絶版になったから再版して……それをさらに追加要素ありで文庫化した……みたいなやつ! 今出てるのは!
サブカル界隈では有名な本らしいのですが、私は全然知らなくて、最近よく聴いてるラジオ番組『ジェーン・スーの生活は踊る』でスーさんがプッシュしていたのを機に読みました。しかも夫が買った電子版をKindleごと借りて読みましたすんません。
読んだら面白すぎてさ! 文庫ならどんなに高くても900円くらいだろうし(大ボリュームなんですよ、電子だから厚さがわかんないけど)自分でも買おうと思ったんですけど、1400円だっていうんだもん! 電子の文庫版が! それはさすがに、一家に2冊あっていい値段じゃないわ~と思って勘弁していただきました。
実際どんくらいの厚さなんだろうなあ……。「箱みたい」って宇多丸さんがラジオで言っていたような言ってないような。リアル書店では見ていないからわかりません。
最初に書きましたけど、ほんと純粋なる「おしゃべり本」で。ヒップホップ専門誌らしく時事ネタとか喋ってる回もあるんだけど(ラップするには時事ネタ重要なんですかね多分)、「モテたい」とか「井川遙と付き合いたい」とかグダグダ言ってるだけの回が圧倒的に面白い。テンポ? メンツ? GROOVE? なんのせいかわからないけど、とにかく男子のおしゃべりとは思えない(※性差別発言)面白さ!
思春期の自意識の話なんかもてんこもりで、このブログ読んでくれてるかたには普通におすすめです。知らない業界の知らない男子5人の話でも面白いのよ。最初誰が誰かわかんなくても、キャラがわかりやすいからすぐにおぼえるよ!
ただ……ただね、この本何故かいきなり「2018年の書き足し部分」から始まるんです。。。前の本を持ってた人がまた新版を買い直す前提なのか。さすがにオマケの同窓会から読んでも「なんだこの内輪ノリ……」って感じでしかないので、そこはまず飛ばしたほうがいいと思います。
あと、私は夫の「飛ばしていいよ」を聞いてそこを最後に読んだんだけど、最後に読んだら読み味がせつなくなっちゃった……。前原さんが一番好きだったから。。。なんか。。。3枚のカードあそびもうしなくてよくない? って思った。
公論クルー、私の好きな順は
前原>>>>>ヨシくん、古川さん>>>>(越えられない壁)>宇多丸>>>>>>郷原
です。
友達になるなら前原さんがいい。でも私に前原さんとの接点があるとすれば小学校か中学校で「ブス!」っていじめられてるだけだろうからやっぱそんな接点要らない。
郷原さんは嫌いとかじゃなくてこわい。ここで喋ってない性癖とかあると思う(ひどい)。

『そして父になる』

これはね……例の赤ちゃん取り違え事件を受けて観ました。なんの映画かも知らなかったけど、子どもの取り違えが小学校入学前に発覚した! というところからお話が始まるんですよ。
ちなみにアマゾンプライムビデオで、細切れにしながら何日かかけて観ました。もう映画とかまとめて観る時間ないから、パソコン開いたらすぐ続きから観られるプライムビデオは本当にありがたい。ベビーがぎゃーんて泣いたらそこでブツ切りにしなきゃいけないわけで、頭出しからしなきゃいけないDVDではとても観られなかったと思います。
取り違え……。観始めた時はやっぱり、「(子どもを)今更取り替えないよね?!」「私だったら2か月世話したらもうむりだよ!」という気持ちでいるんだけど、それが揺れてくる。
もう、全然、結論ないですねこの問題。ただただつらい。全員つらい。
映画だと、片方の親は前橋のしがない電器屋(祖父同居・子は3人)で、片方の親は都心のタワマン住まい(夫が一流企業勤務・妻専業主婦・子ひとり)と、環境が対照的なんですよ。タワマンのお母さんが里帰り出産したので、そういう派手な取り違えになってる。で、一応交換は「する」方向で……お試しに互いの実子を週末だけ泊めてみたりして……進んでいくんだけど、私は「前橋から都会に来させられた子」が一番つらいと思った! 自由に遊び回れる田舎から、夜景が見えようがなんだろうが子どもの行動フィールドとしては単なるウサギ小屋同然のタワマン……無理無理無理! 超退屈! 死ぬ!!!!
そして次点でその「適応できない子」の新しい母になったタワマンのお母さんのしんどさも身にしみた。尾野真千子がやってるんだけどさあ……本当に優しい、真面目そうなお母さんで……福山雅治演じる仕事脳のオヤジのぶんまで色々背負っちゃう感じ。。。。いるいるいる。こういうお母さん都心にちょういっぱいいるきっと。
でも、ほんとうにしんどい設定なのに、映画を観たあとで思い返すと、いいもの観たな。って思うんですよ。それは結論がいいからじゃなくて、過程でいいものにも出会ってるからかな……。子ども、大事!!! みたいな気持ちはやっぱ。だいぶ切ないことがあっても、いいものだけん。。。タイトル通り、ある登場人物が「父になる」ところも素晴らしいし。
あとは、単純に映画の完成度が高いというのもあるでしょうね……。私、これが初是枝作品だっただけど、「え?」って感じだった。え? こんな省略の効いた、最低限の言葉で状況とキャラクターがわかる台詞回ししていいの?? ここまで観てて生理的に気持ちいい構図で撮影していいの?? やっていいんだったらみんなこれやればいいじゃん??? くらいのものだった……。これってほとんど映画観ない人ならではの感想であって、小説で言ったら「みんな村上春樹になればいいじゃん?」みたいな暴論なんだろうか。なんだろうな。

『YES‐NO 小田和正ヒストリー』(角川文庫)小貫信昭

そして忘れちゃいけないのがこれですよ小田和正の本。
あの……言い方に困りますがファンではないです。私が尊敬する草野正宗……の尊敬するシンガー! みたいな形のフンワリした認識しかありませんでした。美声おじさん的な。。。(しつれい)
でも、前もちょっと書いたけど子どもの寝かしつけにSpotify on Google Home miniを活用しまくっていて、鉄板の名曲・なおかつ歌詞が聞き取りやすいものを探しているうちに、オフコースに辿り着いた。というか夫が先にオフコースを好きになった。それで単行本1998年、文庫化2000年というこの古本を買い求め、私に押し貸ししてきたわけですが……
むっちゃくちゃ面白い! 小田和正の人生!!!
ていうかまず、小さい頃好きだった歌手が三橋美智也とかそんな話から始まって、「……この人何歳だっけ?」って思うと、うちの親より歳上なんだよね!! あえて並べないけど、多分同い年のミュージシャンやアイドルを並べてみたらキャッてなると思う。他はみんな「昔の人」みたいな。
じゃあどうして小田和正だけが「今の人」っぽいかというと、90年代に大ヒットがあるからなんですね。「東京ラブストーリー」の主題歌だった「ラブ・ストーリは突然に」の時小田さんは、43歳! 長いシンガー人生、初ミリオンシングルがそこ!
で私なんてオフコースの頃の小田和正のことはなんにも知らないわけなんだけど。。。オフコースでのデビューからブレイクまでがすんごく面白いのよ。コーラスおたく、耳コピおたくとして音楽やってるからライブでの盛り上げ方が全然わかんないとか、オリジナルを作ろうにも歌詞がまるで思い浮かばないとかw 別に「ここおかしいですよ!」みたいな雰囲気ではまったく書かれていないんだけど、爆笑しながら読んだ。
通して読むと、「小田和正=超天然」というイメージが新たに胸に刻み込まれます。ファンの人は知ってるんだろうなこれ。
天然だよ〜天然すぎてやることのスケールがでかいんだよぉ〜。他人を巻き込むことを含むすべてのことに対して、「やればできるんじゃん?」みたいな感じなの。「こんな困難があるだろうが、やる」みたいな感じではない……困難の検討を先に行わない。だから、実にはならなかったプロジェクトもちょこちょこあるんだけど(そういうのを読むのもとても面白かった)、それらも全然、「失敗」ではなく感じるの。読んでて。こんなこと、やってみることができるって、いいなあ〜! って思う。
この本では、そういう小田さんのおおらかさを伸ばした要素のひとつに、お母さんの育て方が挙げられていました。なんでも「いいよ、やりたいことならやってみなさい」って姿勢なんだって。書けば簡単そうに思えても、簡単じゃないんだろうな。しかし心に刻んでおきたい話や……。
ちなみに小田さんのドキュメンタリー本はこの5月にも新しく刊行される予定らしいんだけど、若い世代には認知度ゼロであろう映画制作の話が事細かに書いてあるこの本のほうを私はあくまでおすすめしたい。

と、まあそんな感じで。
細切れ時間で子育て以外のことにも触れているせいかつです。
山崎ナオコーラさんの育児エッセイ『母ではなくて、親になる』にも、文化に触れると癒やされる。みたいなことが書いてありましたが、本当にそうだな〜。なんでだろう。

珍しく借り物のアイキャッチ画像。うちの本棚は今、納戸に据え付けの棚で美しくはない……

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