こぐまちゃん絵本の魅力(3/24)

子どものために買った絵本がだんだん増えてきたが、現在我が家でもっとも冊数が多いのは「こぐま社」の本だ。なぜなら「こぐまちゃんシリーズ」があるから。
私はこぐまちゃんシリーズを愛している。子どもの時も『しろくまちゃんのほっとけーき』『さよならさんかく』が大好きだったが、いまはより強くシリーズの魅力を確信している。
本記事ではその魅力についておおいに語りたい!

まず何よりも先に語るべきは、ソリッドな文章だ。
こぐまちゃんシリーズで、表紙に名前があるのは「わかやまけん」さん。しかし奥付には著者として3つもの名前がある。上から順に「森 久左志」「わだよしおみ」「若山憲」。2人ならばまだしも、3人でひとつの絵本を作るとはどういう分担をしているのだろうか? 小さい頃は気が付かなかったが、読み聞かせた後はいつも気になっていた。
それを私が知ることとなったのは、昨年末頃にたまたま「こぐま社」のホームページを訪れてこのお知らせを目にした時である。

こぐまちゃんシリーズやわたしのワンピースで知られる、主に絵本を出版している《こぐま社》の公式サイトです。

こぐまちゃんの著者の謎が解けるとともに、いつも感服していた文章の書き手であるその人が亡くなったことを知りショックを受けた(大往生っぷりに驚嘆のため息も出たけれど)。3人の著者のうち、文章の書き手は「森 久左志」さん。歌人でもあったという。
歌人! それを知るとすとんと腑に落ちた。なぜ「こぐまちゃんシリーズ」(以下、「こぐまちゃん」と省略)の文章はあそこまで削ぎ落とされているのか。

「こぐまちゃん」の文章は最低限である。
たとえば私がシリーズで今1番好きな1冊『こぐまちゃんのどろあそび』。これはスコップを持って歩いてくるこぐまちゃんの見開きから始まる。左ページに「ぼくのすこっぷ おかあさんにかってもらったの」というテキスト。右ページにはタイトルと著者が大きく記される。
そして次の見開きでは、左ページに地面を掘って土の山を作るこぐまちゃんの絵。右ページにはこのテキストが配置されている。

「よくほれる
 よくほれる」

初めて読んだ時私は心底この2行にやられた。
「おかあさんにかってもらった」新品のスコップは、「よくほれる」。「よくほれる」からどんどん掘ってしまう。あっという間に穴掘りに夢中になるこぐまちゃんの様子がこの畳み掛けるような2行に込められている。
すこっぷでどこを掘ったのか、どうして掘ったのか、そんな説明があったら蛇足だ。
私はハイテンションで読んだ。「よくほれるよくほれるッッッ!!!!!!!!」――そう読むべきだと思った。

そうしてその「最低限の量の文章」の中で光っているのが、やはりこれも歌人のかたらしき擬音語、擬態語であろう。
上の訃報でも触れられている『しろくまちゃんのほっとけーき』の見開きはあまりにも有名だ(後述するつもりだが、ここはもちろん、絵の魅力もある)。
ご存知ない人はリンク先の絵を1度見てほしい。
ほっとけーきが焼けていく過程を、12の、フライパンに載ったほっとけーきの絵で示している。しかし上段2つ目と3つ目、下段の2つ目から4つ目までの絵は、湯気の様子を除けばほとんど同じだ。
一度擬音を読んでしまえば、「ほっとけーきは焼けていく」とわかるが、逆にあなたは、この絵に「焼けていくほっとけーきの音」をつけられるだろうか? 私はつけられない。「ふくふく」「くんくん」あたりはもう、絶対に無理だ。
ちなみに我が家の子は、次の見開きにある「できたできた ほかほかのほっとけーき」を読み終えないうちにすごい勢いでページを戻す。この、焼けていくほっとけーきの見開きを再び読ませようとするのである(次のページに完成したほっとけーきが4枚あるから、私は要求があれば4回までは繰り返す)。
なんというテキストであろうか。響きは絵にふさわしくかわいらしいが、私は「こぐまちゃん」のテキストを読む時、「強さ」を感ずる。削り抜かれて、硬質な芯しかない、その強さである。

文章だけでかなり語ってしまったが、絵ももちろん、私がこの作品に惚れ込む理由のひとつになっている。
別の記事でも書いたことがあるが、私はそもそもこういうペタッとした絵柄が生理的に&幼い頃から好きなのだ。大人になってから見ると、線数、色数の少なさが、ソリッドな文章によく似合ってもいるとも感ずる。
しかし単に「絵柄が好き」ということだけが、絵の魅力ではない。「こぐまちゃん」の絵で特筆すべきは、見開きの迫力である。

「こぐまちゃん」は基本的に、左ページには絵、右ページにはテキストというふうに、絵とテキストでページが分かれている。
だが1冊につき1箇所は、(シリーズ全作を網羅したわけではないので言い切れないが、おそらく)見開きの両ページに絵がまたがるシーンがある。『しろくまちゃんのほっとけーき』では、前述したほっとけーきが焼けていくシーン。『しろくまちゃんぱんかいに』では、おかあさんとふたりで買い物にでかけたしろくまちゃんが、「ながーいふらんすぱん」を手にしたシーン。ここではしろくまちゃんのうしろに、いろいろな種類のぱんが一面に陳列された壁がある。どちらもとても効果的で楽しい、「絵を見開きにするならここしかなかったであろう」という見開きだ。
そんな「見開き絵」の中でも私が一番圧倒されたのは、『たんじょうびおめでとう』。バラ売りされている売り場ではわからないが、この作品はシリーズ編成で「別巻」とされたもののひとつで、通常の「こぐまちゃん」作品より総ページ数が多い。絵が見開きになっているところもたくさんある。ゴージャスな作りである。
それゆえにラストを2連続で見開きにできたのだろうが……。これに関してはもう一切ネタバレしたくない、とにかく読んで絵に圧倒されていただきたい! 大人も「わあ〜〜〜〜!!!!」と声が出ること間違いなしのびっくり展開が、最後の最後に待っている!

ここまで全力で褒めちぎってきてなんなのだが、私は「こぐまちゃんシリーズ」の中にも出来の差はあるような気がしている。
図書館で借りて読んでみて、「これはちょっと遠慮しとこうかな……」と返してしまった作品もある(繰り返し読むような絵本は、購入したほうが絶ッッッ対に良いし基本はそうしているのですが、子が気に入るかどうか図書館で借りて試し読みをすることがあります)。そしてその差は「絵が見開きにまたがっているシーン」にあらわれている気がする。見開きの絵がバシッと決まっている「ほっとけーき」「ぱんかいに」辺りは疑うことなき名作だが、決まっていない作品は読んだ時のカタルシスが少ない。だからはっきり言って、全作品を薦めるわけではない。
しかしそれでも、「こぐまちゃんシリーズ」には他の絵本が持ち得ない魅力が詰まっていると感じる。他のどの絵本もここまでソリッドではないし、大迫力でない。
こういう絵本が他にないかな、といつも探しているのだが、なかなか見つからない。

【紹介した本】

『しろくまちゃんのほっとけーき』

『こぐまちゃんのどろあそび』

『しろくまちゃんぱんかいに』


『たんじょうびおめでとう』

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