卒業旅行記・センチメンタルブルートレイン篇

今朝東京に帰ってきました、豊島です。
寝台列車から東京駅のホームに1歩降りて、冷たい風に吹かれた瞬間、ブヒャーと泣きたくなりました。
日常にかえるのがイヤだって話じゃないんです。
旅は終わるとき悲しいです。
小さい頃、日帰りで海に遊びに行くと、帰りがすっごく悲しかったのを思い出しました。
山の子だからね、海って本当に見られないんですよ。
いまだにおぼえてるんだけど、海沿いの道を北上して、国道が交差してる大きなバイパスで曲がって、山のほうに入って帰るの。そのバイパスを右に曲がるときの悲しさ! もうしばらく見らんない、と思うと、後ろのガラスにぺたっとくっついて、遠くなっていく海を見つめるわけですよ! センチメンタル……。
あれと同じ感傷に襲われました。
私の旅行って気分まかせだから、多分おんなじとこにはもう行かないんですよ(いや、昨日書いた通り湯田温泉はもう1回行く気ありますよ、ええ)。全てが1回きりっていうか、ね、1回会ったらそれでお別れなのですよ。
しかも今回は、往復に乗った寝台列車がなくなるわけですからね。
寝台列車で、ちょっと面白いことがありました。
「行き」で、朝起きたら列車のなかにカメラを持った人がいることに気付いたんですよ。
うーん、鉄オタも極まると動画を撮りたくなるに違いない、と思っただけだったのですが、それが山口放送のカメラで。下関終着の「あさかぜ」がなくなるというので取材に乗ってらっしゃったんですね。
寝台列車の客としてコメントを求められ、まんまと喋ってしまいました。
(カットされなかったら私のテレビ初シュツエンは山口ローカルになります……。)
で、向かいの寝台には同年代の男子が座ってたんですが、このインタビューきっかけにしてちょこっと喋ってきたんですよ。普通、寝台列車で向かいになったからって喋ったりはしないと思うんだけど……だいたい一晩喋んなかったわけだし……(車内はすごく静かです。みんな喋ってない証拠)。
そしたらその人が、「あさってで26になるんです」って言うのね!
「わたしわたし今日誕生日です!」
……すごい偶然でしょ?
そんで、話を聞くと旅程もほぼ一緒なのよ。
3泊4日で、往復が寝台列車、九州で1泊(私は小倉泊だけど、彼は長崎で泊まって、帰りはもう一つの廃止予定寝台「さくら」に乗るという計画だった)。
その時は気付かなかったんだけど、「寝台列車のなかで誕生日を迎える」って計画がそもそも同じだったのね。私は「行き」、彼は「帰り」。
うわーミラクル! わざとらしすぎて小説とかでは使えないくらいのミラクル!
別にその後下関で降りて一緒に行動したりとかはしなかったんですけど、
通りすがりにこういうミラクルがあっただけで嬉しかったです。
いい誕生日だー、と思いました。
帰りは、スーツ姿のおじさんと向かい合わせになりました。
若干きまずい、と思いながらもくもくパンを食べていたら、検札に来た車掌さんが「き、きまずくないですか、お互い? 空いてる席探しますよ!!」と言ってくれたんですよ。
したらやっぱり、それとっかかりにしておじさんと話すことになったのね。
「あなたはいっつも寝台に乗るの?」って訊かれて。
いやいつもではないです、今回なくなるって聞いたので乗ってみました、って言ったら、
「私はいっつも出張の時は寝台にしてるんだ。大学受験の時乗って、いいなあと思ってね」
と語り出すおじさん。ふんふんと相づちを打ちながら聞く。
30分くらいは喋ってました。
私、初対面の人と喋るのってすごく苦手だと思ってたけど、それって「飲み会」とか「売り込み」とか、「こいつ面白い!」って思わせなければならない状況が苦手なのであって、こういう、通りすがりに喋ることは全然イヤじゃないよ! 発見!
別に特別面白い話をするわけじゃないんだけど、その当たり前な話をしてる感じがいいのね。
いち個人の生活が見えてくる感じがいいです。なんか、その、若き日のおじさんが寝台列車に揺られていろんなことを思いながら受験に向かってる、っていう絵がいいじゃないですか。たぶん緊張したり、東京の大学生活への夢も不安もあり、でもそのなかで「にしても寝台列車いいなあ」って思ったんだよ、たぶん。
いや結局、席、かえてもらったけどね?
だって30分して戻ってきた車掌さんが、向かい居なくて広々使えるとこが空いてるって言うんだもの! そりゃー移らせてもらいますよ!
おじさんには「お話をどうも」とお礼を言って別れました。
おじさんは「よい旅を」と言って笑ってくれました。行きで喋った男子も言ってたな。
登山道で人とすれ違うとき「こんにちは」って言うのと同じような定型句なんだろうけど、いいよね。こういう定型句のある世界って。
そんな寝台列車での二幕もあって、ものすごくいい旅行でした。
いいでしょ?! 寝台列車!(イヤめったにこんなことってないと思うけど。)
このたび2つの列車が廃止になるわけですが、日本にはまだまだ寝台列車が走っています。
「速い?」とか「安い?」とか訊かれることがありますが、はっきり言って新幹線と比べても安くはないし、ぜんっぜん速くはありません。東京-下関で15時間乗ってました。
それでも、乗ったことないかたは1度くらい乗ってみてはいかがでしょうか。
今回私は、九州を遠いと感じませんでした。
あと、素敵な寝台列車逃避行小説「日傘のお兄さん」ぜっさん発売中です!!(ちょっと嘘)