掲載情報と仙台の思い出(3/19)

雑誌に書かせていただきました。
「小説宝石」4月号に『美奈ちゃんの羊』、
「小説現代」4月号に『春風と天井の光』、
という短編を書いてます。ともに22日発売です。
いっきに載ると気分は売れっ子。しかし実情はといえばまた別の話です。はい。
「小説宝石」が「情愛小説のいま」という特集、
「小説現代」が「女性作家のエロティック小説」特集です。
……まあ、春だから。
色っぽい姐さんになったみたいですが、実情はといえばこれもまた別の話です。
あ、そういえば「小説宝石」に酒井順子さんの「女子と鉄道」という連載があるのですが
4月号のトピックは、前にココでも取り上げた寝台列車「あさかぜ」の話でした(「雑記」参照)。
比べて読むと自分のガサツさがわかります……。
さらに余談で悪いんですが、「宝石」の方、舞台が仙台なのです。
書きながら思い出したことが一つありまして。
私が仙台で予備校生をやっていたころ、だいたい4年前の話です。
ある秋の日、私は妹の誕生日プレゼントを買うため、駅前の大型書店に向かって地下道を歩いていました。
すると、うすぐらい地下道の階段を、よろよろと下りてくる人影がありました。からだじゅうに柄のある布キレをまきつけた、汚れたパッチワークの亀のようなおばあさんでした。頭にも正体不明の布が巻き付いていて、髪は栄養がいきわたっていない感じに、つやを失い切っていました。
そのおばあさんは私に向かって歩いてくると、いきなりこう言ったのです。
「すみません、生活が苦しいので、千円貸してもらえませんか」
通常、無視して話は終わりです。冷たいようですが、世の中そういうものなのです。おばあさんの見た目は確かに「生活が苦しい」ことを訴えていましたが、「千円」はちょっとあつかましすぎです。
私も、特にお人好しというわけではありません。むしろ、親しい友達は私のことを「情に欠けた奴」だと認識してくれています。
しかし。そのときの私は特殊状況下にありました。
小論文の課題で「星の銀貨」(※)を読んだ後だったのです。
そしてさらに、悪い条件が3つ重なっていました。
1)誕生日プレゼントを買いに行く途中なので財布に結構入っている
2)秋の書店くじキャンペーン中である(一定額の本を買うとくじがもらえる)
3)妹への誕生日プレゼントは松本大洋の書き下ろし単行本と決めてある
3と2から、私はこの後書店に行ってくじをもらうことが確定しています。
「書店くじ」は、箱に手をつっこんで引くタイプのくじでなく、店員から一方的に渡されるタイプのものでした。つまり、自分のカンでなく、書店に行くタイミングのみが当たりハズレを左右するわけです(それもまあ運なんですけど)。
そこに「星の銀貨」が介入してくるとこうなります。
おばあさんに財布から千円出して渡す
      ↓
この行為によって私が書店に行くタイミングがずれる
      ↓
もらう書店くじがかわる
      ↓
おおあたり
私は自分の財布から千円出して、おばあさんに手渡しました。
おばあさんは何度も頭を下げて、「来月になればお金が入ります、必ずお返ししますから」と言って、自分の住所を書いた紙を私によこしました。青いボールペンで書かれた、よろよろのメモでした。そして、お金を送るために私の住所を教えてほしいと言いました。住所は大事な個人情報ですが、当時私は寮住まいでしたし、どうせすぐに変わる住所だと思って、地下道の壁にメモ用紙を押しつけて寮の住所を書きました。
そうこうしている間に、時間は過ぎていきます。きっと私がもらう書店くじは、「このおばあさんを無視した場合」と違うものになっているはずです。
メモを渡すと、おばあさんは何度も頭を下げて地下道の奥へ消えていきました。
私はおばあさんの住所が書かれたメモをちゃんとかばんにしまい、期待に胸ふくらませながら書店へ向かいました。
くじがはずれたことは言うまでもありません。
同じ寮の子にこのことを話したら「何やってんの?」と言われました。
自分でもどうしてあの時あんなことを考えたのかわかりません。
寮を出ていくまでおばあさんからの封筒が届くことはありませんでした。
私の手元には青いボールペンで書かれたメモだけが残りました。
あまりに力ない筆跡からは、「番地」と「名前」が読み取れませんでした
とっぴんぱらりのぷー。
※星の銀貨
女の子がまずしい人たちに食べ物や着るものをつぎつぎに与えていたら、とうとう手ぶらのはだかんぼうになってしまう。さすがに困り果てる女の子。すると寒空から星が銀貨となってふりそそぐ。という西洋のお話。
小論文の課題はこれをさらにひとひねりしたもので、「昔話そのまんまの女の子」「昔話を知っていて(=銀貨という報酬を期待して)他人にほどこしを与え、まんまと銀貨をもらった女の子」「まんまと銀貨をもらった女の子の話を聞いて、『そんな汚い真似をするよりなら、私は誰にもものを与えない』と決め、食べ物や服をもとめてくる人たちを無視した女の子」の三人が出てくる。
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「ウェブマガジン幻冬舎」での連載エッセイも始まっております。
連載始まってからこのブログのアクセス数が倍増しました。びっくり。
それで、たまには何か書かないとなー、と上の文章を書いてみたんだったりします。
基本的にこのブログは雑文少なめですのでご了承ください。