新刊紹介【長文注意】(8/24)

ちょっと時間が空いたので新刊『東京・地震・たんぽぽ』の
紹介をさせていただきます。
タイトルまんまの、東京に地震が起こる小説です。
なんでまた「地震」! と思われるかもしれませんが
私としては、普通に思いつく範囲内というか……
「若い女性作家なら恋愛をテーマに小説を書くのが普通」と思い込む人がいるように
「東京に住む作家なら、いつも震災について考えているはずで、
 それをテーマに小説を書いてみるのは普通」と考えてしまったのでした。
「しまった」とあえて書いたのはアレです。
地震をテーマとするリスクに、あとで気付いたからです。
想像だけでは、実際に震災に遭った人の衝撃を再現するのは不可能です
(「少なくとも私には」という、このブログによくある断り書きを付け加えておきますが)。
もちろん、被災経験のある知り合いから話を聞いて書く、という選択肢もありますが
それをするなら「小説」にする意味はないと思いました(「経験談」のままのほうがいいんじゃ?)。
そこで「やめます」と言ってもよかったかもしれません。書き下ろしですし。
でも最後まで書いたのは、「興味」と「自分がまだ若いことへの甘え」からです。たぶん。
やっぱりどうしてもどうしても、地震というテーマは気になるし
テーマの重さに立ちすくむ(くらい分別がつく)ようになってからでは
おそらく書けないだろうと思いました。
今、東京を舞台にした震災小説というのは数多くはありません。
でも、もし実際に東京を大地震が襲った時に、
事前にそれをテーマにしてみた小説があったほうが……
「どっちかといえばいい」と思いました。
サバイバルするのに役立つとか、都市計画を見直すのに役立つとか
そんな大仰な意味で「震災小説はあるべき!」と言ってるんではなく、
「存在しないよりは存在するほうがなんかよく思える」くらいの微々たる意味です。
なので、「自分は震災経験者だが、地震というのはこんなものではない」
「なにもわかっていない人間に震災を描かれて非常に気分を害した」
というかたがいらっしゃれば、申し訳ないと言うほかないのです。
無謀な試みを選んでしまった私が悪いんであって。
実際、先月の中越沖地震の報道を見て「あっ」と思ったこともたくさんありました。
ここはまるで思いおよばなかった、想像が圧倒的に足りてなかった、というところが。
でも、報道とも経験談とも別な部分が、震災と人間のあいだにはまだあるんじゃないかと
思ったから書いたのであって。……。
……言い訳がかなり苦しくなってまいりました。
だいたい「この作品をなぜ書いたのか」なんていつもは書かないようにしているのに。
でも今回は「言い訳ナシ」で通すのは無理、とわかっていたことだけは
理解していただこうかと思って書きました(って、一発で読めませんよねこの文章)。
ここまで言い訳を重ねといてなんですが、
私の小説を何度か読んで下さっている方には、構えて読んでもらわなくても大丈夫です。
パニック小説でも、プロジェクト小説でも、シミュレーション小説でもありません。
私のいつもの小説と同じです。いろんな人が、わりと普通めの生活の中でいろいろするだけです。
ただ状況が「地震」なだけです。
よろしくお願いいたします。
ちなみに表紙は黒地です。今回もばっちりな装丁にしていただきました。ありがたいことです。
集英社の新刊試し読みページで表紙も見ることができます。