世界のサネアツ・下 記念館篇(11/12)

上の記事の続きです)
試演会の開場まで時間もあるので、私たちは記念館に入ることにしました。
入場料200円というところから、あんまり期待はしていませんでした。
もう、エエ庭見せてもらった御礼って感じです。
そんなに武者小路実篤のこと知りたいわけではないです。
そもそも武者小路実篤とは何者か。
私たちの世代では、
「小説家だったけど、晩年、かぼちゃとナスが仲良くしてる
 みたいな絵入りの色紙描いてばんばんもうけたおっさん」
というイメージがあればまだいい方じゃないかと思うんですが……。
まあ、小説家です。国語の便覧とかには間違いなく名前が出てきます。
ぶいぶい言わしてたのはちょっと昔で、
うちの母なんかは「『友情』いいわよう。読みなさいよう」とか
読書感想文で悩んでる時にすすめてきたような気がするんですが
文学部出身の私でも、周りの人が「読んだ」と言っているのは聞いたことがありません。
そして私自身も……母から押し付けられたカビた文庫本は押し返して、
読んでいませんでした。
「かぼちゃとナスのおっさん、肝心の小説はもう読まれてへんやん」
と中1にして冷めた目線を向けていたのを憶えています。
副業(?)で成功したために元祖絵手紙ストとして今も一部で崇拝されてるけど
お前の本業はどうなったんやおっさん! みたいな。
記念館も公園と同じく人影は少なし……。
そして邸宅と同じく超コンパクトなつくり!
記憶によると、展示室2、資料室1、休憩室1です。
展示室もほんと小さい。
そして展示室の壁の4分の1あまりを占めているのが年譜です。
とりあえず年譜を読み始めた私はまた愕然!
人生の序盤から絵の話しかでてこねえ!!!!
かぼちゃとナスは副業じゃなかったんです!!
サネアツは若い時から絵の勉強をしているのです!
(そういう学校に行ってはいないけど……)
ていうか小説の話が全然出てこなくてさすがに変だな? と思ったら、
展示室の年表は「小説の仕事篇」と「画業&その他篇」に分かれているのでした。
でも、上下2段に分割されたそれらは、小説が下。。。
いや上下にあまり意味はないのかもしれませんが……。
とりあえず、面積的に半々で、小説を前に押し出したいという意図は伺えません。
サネアツ……本当に画家だったんやんサネアツ……。
年譜の中ではロダンを訪ねたりロダンと文通したりしていました。
かぼちゃとナスでブレイクする遥か前に。
なんでそんな権限あんのんと思いますが
彼は公家の家系なのです。「武者小路」は本名だし生家は千代田区一番町だし
父は岩倉具視の使節団のひとりというスーパー高貴な血の持ち主なのです。
とかって家のおかげと決めつけてごめんね……
(でもほらヨーロッパって貴族社会じゃん?)。
他に岸田劉生と親交があったことも影響しているのかもしれません。
とりあえずロダン岩が本物のロダンから貰った岩であろうことは判明しました。
訪欧は結構人生の前半だったので(郵送で受け取ったことももちろん考えられますが)、
それからずっと仕事机にロダン岩を据えていたのだと考えると
おどろきっていうか……せつないっていうか……逆に気迫ありすぎなんか? と思ったりというか……
ちょっとうろ覚えですんません。わりと読み流しました。
でも最後(90歳で永眠)まで読んで私はさらに衝撃を受けます。
私「この人……賞とってなくね……?」
友「……ほんどだ」
絵はなんか……たぶんあんまり重要じゃない系の入賞歴があるけど……
小説!
ない!
あんな教科書とかに載りまくってんのに文学賞の候補歴すらこの年譜には残っていない!
この人は文学賞をとっていないんだ……
この瞬間私はサネアツを友だと思うことにしました
年譜以外の展示は結構地味です。
友人の手紙がちょこっとあったり、単行本がずらずらと並べられていたり……。
途中からサネアツの本はマイ装丁になります。
全部、あのかぼちゃとナスの絵みたいなかんじの表紙です。
年代順に絵を見ていき、また私は新たな気付きを得ます。
サネアツの絵はいっこうに上達していない。
でも売れた。
この瞬間私はサネアツを我が人生のロールモデルにしようと決めました
嘘です。サネアツが努力家なのもちゃんとわかってます。
あと絵のうまいへたは問題じゃなく何か彼の根底にあるものこそが人に求められたこともわかってます。
あと私が公家の出身じゃないってこともわかってます。
サネアツはちゃんと何十万部のベストセラー出したってことも知ってます。
でも文学賞からガンシカくらって公称画家でもなくって絵を描き続けて
あの素敵なお家&庭を手に入れたサネアツに学ぶところは大いにあるだろうと思いました。
展示を見た後は休憩室でお茶(タダ)をいただきました。
ここも庭が見えて景色がきれい。
窓辺の机にかぼちゃとかカキとかの模型? と色鉛筆が置いてあって
「あなたも実篤にチャレンジ!」的なコーナーができています。
茶を飲んだ後友だちと一緒にものすごい勢いでくいついた!
けど私の絵はひどすぎて持ち帰ってきました……。
(置いていくと展示されちゃう仕組み。)
資料室では貴重な資料を読むことができますが
絵を描くのに時間を取りすぎたのでスルー。
展示室を出て、入り口手前にあるおみやげコーナーに戻りました。
何故か「実篤チョコ」とか例の自然物の絵が入った
グッズが売られていますが、もちろん本もあります。
とりあえず1冊買って帰る! 
私は今日からサネアツエッセンスを学ぶんや!
と意気込んでいた私は、
「新しき村」発行の、普通の書店では買えなさそうな本を選んで
レジに持っていきました。


これです。
なんかめっちゃ宗教臭するやろ?
でも大丈夫! サネアツは仏陀とイエス両方尊敬してるって
いきなり出だしに書いてあるから!
なおかつ仏陀とイエスと違うのは性欲を罪悪と思わないところ、
っても書いてあるから!!
なんて俺向けの本なんだYeah!
あ、中身はサネアツの既存の文章から「新しき村」についての
記述を集めた名言集みたいなかんじです。
「新しき村」っていうのはサネアツが33歳の時に
「調和社会を目指して」建設した理想郷です。
自給自足の小さい村だけど、出版事業もしているらしい……。
「新しき村」についても色々思うところがあるんだけど
(私もユートピア幻想あるわ〜
 今や私らの世代ではわりとメジャーな幻想なのでは)
たいがい長いんでサネアツの話はこの辺で!
思わぬ展開を呼んだ『初恋素描帖』朗読劇を観にいく旅でした。
ちなみに私、これから1ヶ月以内にサネアツゆかりの地をあと2つ訪ねる予定になってる……
今回の仙川行きより前に決まってた。
なんつー摩訶不思議展開。
人生のピタゴラスイッチ押しちゃった感……
やべえ……かも?