ミラクル(11/22)

昨日は大学の図書館まで出かけました。
サネアツのことを調べに……(サネアツ熱は一応継続中)。
具体的には、彼が秋田県疎開中に書いた日記作品を読みに……。
サネアツは長い生涯に4本(4まとまりというのか)しか日記を残していない、
うちひとつが秋田県滞在中に残した日記で、しかもその中で終戦を迎えている。
地元の人間は「昔、武者小路実篤が疎開してきていた」と言うばかりで
(そして家によってはカボチャの絵を飾っていて)
そこで何が記されていたか知らないみたいだったが
私は知るぜ! 知ったるぜ! 
というわけで、1947年出版の実物を読むために早稲田までのこのこでかけていきました。
大学の図書館は、卒業してからもたまに来ることがあったけれど、
再上京してからは多分初めて。地下鉄・早稲田の駅で降りるのも、いつぶりのことやら。
地下鉄の駅から出て辺りを見渡すと
(見渡さなきゃどっちに行けばいいかわかんないくらい、もう忘れている)
ぱっと目に入ったのが、文キャンそばの神社・穴八幡。
穴八幡にはこれでもかというほどお願いごとを叶えてもらい、
秋田に居たときも、東京旅行中に寄れる時には寄っていたくらい。
ここまで来たし、ひとつ挨拶に行くべきか?
でも、今日は目的があって図書館に来たんだし、第一今は
地元の神社にお世話になっているし、さっさと図書館に行った方が……。
思い直して信号を渡ってしまおうと思ったけれど、
ぴょんと高い台地にあってこちらを見下ろしている神社の木が、
おいでおいでと言っているよーな気がしてしょうがない。
んんんん……
寄っても15分くらいのことだし、御礼参りくらいしていくかっ!
と決めて、寄ることにした。
学生の時からちらほらと来ていた穴八幡。
文学部キャンパスは様変わりしたという話だけれど(もうずっと近付いていない)
境内は何も変わらない気がする。
木々のキラキラ感と空気の気持ちよさ。
参道を歩きながら、やっぱり来てよかったな! と思った。
寒いけど、とてもいい天気だったのだ。
今まで、遠くからも多少見守ってくれていたかもしれないのでその御礼だけ告げ、
お願いごととかは何もしないで(それを請け負ってるのは地元の神社だし)、
境内をあとにした。


南門から入り、図書館への近道を歩く。
銀杏が場所によっては色づいていて、きれい。
キャンパス内で携帯のカメラ構えてる私は怪しい人だが、つい撮ってしまう。


図書館はとてもすいていた。
地下にある研究書庫(持ち込める荷物の制限があり、在校生以外は
 名前と住所を提出しないと入ることができない)にもぐり、
目的の『稲住日記』を探す。
なんと和綴じの本で、(検索した時総ページ数51となっていたから
 どれだけ薄い本なんだ! と思っていたけれど、和綴じだから……)
コピーするのもためらわれるたよりなさ……。
時間はあるので、その場で読んでいくことにした。
1時間ほどで読み終わった。
サネアツは山奥の温泉に居て、たまに講演に引っぱり出されるくらいで、
秋田を満喫してはいなかったようだ……。
(もちろん面白い情報も1つや2つはあったけれど、それは別の機会に。)
ちょっと拍子抜けしたが、時間がまだあったので、
他のサネアツの本を検索機で探し、読んでいくことにした。
せっかく研究書庫まできたんだもの。
『稲住日記』は誰かエラい人が寄贈してくれた文庫であるらしく、
地下1階の奥のほうに除けられていたが、
次に読もうと思った本は、地下2階の文学の分類の棚にあった。
学生の頃から、他のフロアより書庫が好きだった私には、
勝手知ったる棚。案内図も見ずずんずん歩く。
しかしその「ずんずん」歩いている間に、ふと、視界の隅に
気になる本のタイトルが見えた気がした。
秋田県という文字、それからうちの親の職業に関係する文字が並んだタイトル。
要するに「実家でよく見るタイプの本」だから目に留まったのだろう。
そういうのもこの書庫にはあるから、何も気にすることはない。
ない……はずなんだけど何か妙に気になり、
二三歩後退して、その本を手に取った。
手に取って、わずか数秒で私は驚きおののくことになる。
著者を、知っていたから。
高校の、同級生と思しき人だから。
というか、もし同姓同名の他人でなければ、私のエッセイに数度登場した「Kくん」だから。
さっそく後ろから本をめくり、著者プロフィールを確かめた。
1981年秋田県生まれ。
この漢字にこの読みの名前——間違いない。本当にKくんなんだ!!
私は新しく探していた本と、Kくんの本を一緒に閲覧席に持っていき、
Kくんの本の「あとがき」から読んだ。
Kくんの本は、すごく研究対象範囲のせまい学術研究書で、
貴重なデータを集めた力作なのだが、いかんせん私が読んでどうなるシロモノでもない。
しかしあとがきなら読めるであろう!
あとがきで、Kくんは立派だった……
苦心しながら勉強を重ね、今は自分の研究分野を築いて
西の方の大学で教鞭をとっているという……。
あとがきは、院生時代から支えてくれたという妻への謝辞で締められていた。
まるきり立派な社会人だ……。
私は研究書庫の壁際の閲覧席でひとりもぞもぞした。
なんてすごいんだKくん!
なのに私は……Kくんをダサいけど好きとか
頭ぼさぼさとか、好きだったけど彼氏が欲しいだけだったかもとか
みたく散々なふうにエッセイ(『底辺』第一話など)に書いてしまったよ……。
ごめん……(読んでいたら余計、ごめん。イラッと来たよね……)。
きっと立派な男性になったんだね! よかったね!
妻も私より全然素敵な妻であろう! うっうっ……
嘘。嫉妬とかはない。
でも感動しました。
ネット検索のできるこの時代に、私はKくんの名前を
一度も検索することなく、
この何十万という蔵書のある書庫で突然! 見つけたのだから〜!
しかも本は今年出たばかりの本だった。
私はここに来て初めてそこにあった本を、見逃すことなくキャッチしたんだねぇ……。
「あとがき」には高校時代のことなんて1ミリも触れられていなかった。
でもその本は、高1で彼が進みたいと言っていた分野の、本だった。
世の中にはそんなこともある。
あるんだねえ……。